神楽先生には敵わない
笑いながら男性達は私を挟むように図々しく座ってきて、
怪訝な表情を浮かべる私にお構いなく喋り続けてくる。
「よかったらぁ、もっといい場所で花火見れるトコ知ってんだ。一緒に行かない?」
「いやでも、私待ってるんで」
「こっからすぐだし。相手が戻ってくればまたここに帰ってくればいいしぃ」
煙たがる私など全く気にしてないようで、
そのまま立ち上がるといきなり私の手首を掴んで無理矢理立たそうとしてきた。
「ちょっ…!」
掴まれた痛みに声を上げたその時、
うわっ!ともう一人の男性の怯む声が聞こえてきた。
堪らず背後を振り返ると、そこには男性の腕を掴み背中側へ捻り上げてる先生の姿があった。
「みちるちゃんに何か用かな?」
そう呟く顔は笑顔だが、男性達を見下ろす目は笑っていない。
その間も腕を掴まれた男性は苦痛の表情を浮かべたままで、
時折言葉にならない声を上げては歯を食いしばっている。
「何か、用かな?」
グググッと腕を掴む手に力が入ってもその表情は涼しいまま。
一気に顔面蒼白になった男性を見て、漸く私の腕を掴んだ手が解放された。
そして一目散にその場から立ち去っていき、
それを追うようにもう一人の男性も慌てて逃げていった。