神楽先生には敵わない
「ごめんね、怖かったでしょ」
はい。と差し出したのはトレーに入った林檎飴。
私はそれをお礼を言って受け取ると、
怖かったです。と被せるように言った。
「でもそれ以上に先生が帰ってこないから、そっちの方が心配でした!」
「だって色んな出店あってさ、何を買おうか悩んじゃったんだよね」
少し睨むように先生に言うとあははと笑いながら悪びれた様子も無く呟く。
「林檎飴でしょ?あと、チョコバナナもあった。それとワッフルも。堪らないよねぇ」
ふふふと嬉しそうに林檎飴を齧る先生。
―――不安で待っていた私の気持ちも知らないでっ…!
その満足そうな横顔を見ながら少しムッとしたが、
今は戻ってきてくれただけで一先ずよかったと、気持ちを落ち着かせた。
その間も花火は打ち上がり、
時に会場からは歓喜の声を上がっている。
私も林檎飴を齧りながら時折夜空を見上げその美しさに見蕩れた。
「…東京の空は、ホントに星が小さく見える」
「え?」
突然ボソリと呟いた先生の一言に、
私は何気なくその横顔に視線を送った。
「僕さ、東北生まれなんだけど、あっちは空が綺麗で空気が美味しい。だから時々帰りたくなるよ」