神楽先生には敵わない
同じ空気、同じ景色を共に共有できれば、
もっと先生に近づけるかもしれないから。
「先生の故郷、絶対連れて行ってくださいね」
照れながらそう伝えた時、
ゆっくりと先生の顔が近づいてきた。
私が瞬きをする間もなくそのまま先生の唇が私の唇に重なる。
「…っ」
重なった数秒間、私は何も考えられなくて、
ただその柔らかい感触と先生にキスをされているという状況だけがぼんやりと意識できた。
大会はクライマックスに近づき大型花火がどんどん打ち上がる。
要約離れた先生の顔を至近距離で見つめる。
眼鏡のレンズに写る私も顔が真っ赤だが、
先生の頬もほんのり赤らめているように見えるのは、
花火の明るさのせいか、それともーーー。
「みちるちゃん、僕じゃダメかな」
その言葉は打ち上がる振動音の何倍も体の芯まで響いてきた。