神楽先生には敵わない


居酒屋ばかりが密集するこの通りにはまだまだ活気で溢れていて、
あと一時間で日付が変わろうとも人通りが多い。


そんな中をおぼつかない足取りのまま、

私は椎名の補助を借りながら何とか歩く。




「覚えてるか、大学のサークル新歓の飲み会の時こんな状況あったの」

「そうでしたっけ…」

「周りからの勧めを断れなくて缶ビール飲まされて、お前がぶっ倒れて俺が介抱してやったことだ」

「…覚えてないです」



椎名の横顔を見上げながら申し訳無く呟くと、
当の本人はいびきかいて寝てたな。と意地悪そうに呟いた。



「…そう考えたら俺もそろそろ報われてもいいんだがな」




前を見据えながら話すその姿は何処か哀愁漂う姿で、


何気なく言った言葉も意味深に聞こえてくるのは気のせいだろうか。





「…報われる?」

「こっちの話だ。お前に関係ない」

「うっ」



真顔でピシャリと一刀両断されれば、それ以上会話も続かず暫くだた歩くだけ。



漸く裏路地を抜け国道に出てくると、椎名は手を上げて一台のタクシーを呼び止めてくれた。


ハザードをつけながら路肩に止まったタクシーの扉が開くと、
椎名は私をゆっくりと後部座席に乗せた。


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