神楽先生には敵わない
スケジュールを何とか調整しやってきたのは九月の大型連休。
だけあって、旅行客や観光客であろう人達が駅前には沢山いた。
「これからどうしましょうか。せっかく来たし観光でも…」
そう言いかけたとき、みちるちゃん。と先生がポツリと呟いた。
「行きたい所あるんだけどいいかな」
前を見据えながら呟く先生の横顔を見上げる。
その視線の先にはどんな思いがあるのだろう。
少し見蕩れてから、はい…と答えた。
ここは先生の故郷。
もう何年も帰ってないと花火大会で言っていた事を思い出す。
それと同時に何故今帰郷してきたのかも少し気になる。
もしかして温泉のという名目で帰ってきたかったんだろうか。
だったらわざわざそんな遠回りした言い方をしなくても。
それとも別の目的があって…?
「みちるちゃんこっちこっち」
「あっ、はい!」
ぼんやりしていた私を急かすように先生は先に歩いていく。
何処に行くのか目的地すら聞かされない私は、
ただ先生の後をついていく事で精一杯だった。