神楽先生には敵わない
その花束の種類と場所を見て、漸くここの来た意味を理解できた私。
先生は砂利道をゆっくり歩き私もその後に続く…。
山の澄んだ空気と九月の強い日差しを遮るように木漏れ日が降り注ぐ。
都会にいたらまず経験しないような光景と匂いに私は辺りを見回しながら、
先生の背中を追いかけた。
そして森林の中を抜け一気に眩しい日差しが照らされた時、漸く目的地に到着した。
「ただいま」
そう先生が言った先にあったのは生い茂る草木の中にある一基の墓石だった。
墓石には‘神楽‘と掘られてあり、随分と古びたていて苔や汚れがひどい。
「あ~あ、何年も来てないと汚れが酷いな。って僕が悪いんだけど」
苦笑いしながら手で墓石の周りに生えた雑草を軽く抜き出した。
その姿を見た私も自然と同じ動きをし抜き始める…。
「みちるちゃん、手が汚れる…」
「いいんです。一緒にやれば時間かかりませんから」
私の行動に先生が驚いた様子で話すも、私は手を止めず抜き続けた。
一所懸命に動く私を見ながら先生の表情が緩む。
そのまま数十分掃除をすればあっという間に墓石の周りは来た時より見違えるほどに綺麗になった。