神楽先生には敵わない
旅行から数週間後。
作品の特集ページや、年明けにある大型企画に向けて慌ただしく仕事が立て込んできたせいか、
先生とも連絡する時間すら取れないままだった。
バタバタ続きで目の前にある仕事をこなすことで精一杯の私に、
編集長が突然声をかけてきた。
「櫻井、ちょっと」
その声はやけに真面目で、
表情もいつもの編集長じゃない空気すら漂わせている。
「…はい」
何かやらかしたかな、と内心不安を感じながら編集長と共に編集部から離れた別室に向かった。
部屋に入るやいなや、編集長は頭を掻きながらさっきな。と話を続ける。
「先生からメールもらったんだが、お前先生から何か聞いてるか?」
「メール?何のことですか」
「…そうか。知らないか」
寝耳に水の話につい頭を傾げた私。
そんな私の様子を見た編集長はやっぱり。とため息をついた。
全くメールの内容に検討がつかない私は、どうかしたんですか。と詰め寄った。
「いや、それがな…」
少し言い辛そうに編集長は重たい口を開いた。
仕事の話なら必ず私を通してくれる。
でも直接編集長にメールするなど、もしかしてよほどの事なの…?
「担当を変えて欲しいって言うんだ」