神楽先生には敵わない

ピンポン!ピンポン!!


「はいはい、どなた…」



月が浮かぶ、その日の夜九時過ぎ。

連打される玄関のチャイム音に、
先生は慌てた様子で玄関まで小走りでやってきた。



ガチャと鍵を開けてゆっくりと玄関を開ければ、

そこにははぁはぁと少し息切れをしながら不安そうに立つ私がいた。



「みちるちゃん、どうしたのそんな顔して」



驚いた顔してその様子を眺める先生に、
私は俯いたまま呼吸を整える。


そして落ち着いた頃、おもむろに顔を上げると先生の顔を見上げながらこう言った。



「先生、お話があるんですけどいいですか」



その真剣な眼差しに先生は数秒黙った後、私を中へと招き入れた。










「どういうことですか、変えて欲しいって」



アシさん達がいない自宅には私と先生だけで、

その重苦しい空気は何処かひんやりと冷たかった。



「変えて欲しい?ん?何のことだっけ…」

「とぼけないで下さい!」




リビングのソファーに座り笑って煙草を吸う先生に、
私は堪らず声をあげてしまう。


私がここにやってきた理由なんて言わなくても先生は絶対分かっている。

なのに、どうしてそんな平気な顔ができるんだろうか。



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