神楽先生には敵わない


恋人とかそんな関係は二の次三の次で、

これからも先生の側にいたいと純粋に思ってしまったから。




「…」



先生は俯いたまま、ありがとうと小さく呟く。


きっとそれが私に対する精一杯の気持ちなんだろう。




「じゃ、夜分遅くすみませんでした。おやすみなさい」



その言葉も姿も今の私にとっては、見るに代え難い光景だった。

苦しさと悲しみから逃げるように軽く頭を下げるとそのまま自宅を後にした。






何がどういけなかったのかなんて、全く検討がつかなくて、
簡単には気持ちの整理なんて出来ない。


一方的に言われて内心は納得いかないこともあるのに、

何も追求せずにあの場から立ち去ってしまったのはやはり自分の弱さだろう。




それ以上に仕事よりも特別な感情が働いてしまったからこそ、


逃げる選択肢しか浮かばなかったのかもしれない。




先生のマンションを出て外から何気なく、先程までいたあの部屋を見上げる。

もうあそこには私の居場所は無い。


みんなでお茶したり話をしたり、
時には原稿を手伝ったり、仕事以外にも沢山の会話があった。



本当に楽しかった。

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