神楽先生には敵わない
act14 大好きな先生


「お。出てる」



十一月下旬、ふと何気なく入った本屋で平積みされていたのは、
オトナの階段最新刊だ。

それと同時に私が担当として最後に編集をした作品でもある。



帯には、累計発行部数一億冊突破!と大々的に書かれていて、

アニメ制作、実写映画化決定!!の文字もある。



新しい担当者は私よりも凄腕で、
今までも数々の作品をヒットさせてきた人だ。



アニメも映画も先生はずっと断ってきていた。

あくまでも漫画の中だけの世界で終わらせたいとこだわってきたから。


しかし昨今の本離れや電子書籍と比べて出版本自体の売上が著しく悪くなっている事に、
先生は少しだけ危機感を感じていた。


それを追い込むように古本や中古商品が多く出回ったことで、
出版社に大きなダメージを受けているからだ。



きっと色んなことが積み重なって先生も苦渋の決断をしたのだろう。



「ページをめくる楽しみって本でしか味わえないじゃない?どうなるんだろうとかさ。作者ってそういうところ大切に考えてるんだよ」



先生はいつも言っていた。

一冊の本に喜怒哀楽が全て詰まってる、だからこそ手に取って欲しい。と。



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