神楽先生には敵わない
私は一冊手に取ればそのまま胸に抱えレジへと向かった。
先生の担当から外れた私は今の部署の残ったまま、
事務や、イベント準備などの裏方作業に回ることになった。
担当を持っていた時以上に忙しく、仕事も倍になって、
先生の事も思い出す余裕もないぐらい毎日が目まぐるしく過ぎていく。
でもそれでよかったのだと思っていた。
好きな気持ちも感情も時間が経てば次第に薄れていくだろう。
自分の心の中で自然と先生の存在が消えていくのを待つしか方法がないのだから。
師走に入った十二月中旬、編集長から忘年会の出席の有無を聞かれた。
都内のホテルにある広い一室を貸切って行われるらしく、
関係者だけでなく芸能人も多数参加するらしい大きなイベントらしいのだ。
「自由参加だからどっちでもいいぞ」
その日は特に用事もなく、仕事が終わればただ家に帰るだけなので、
一先ず出席に丸をつけた。
晩御飯代ぐらい浮けばいいかなぐらいのノリで、
特別深いことなど考えていなかった。
ただ…、それだけ。