神楽先生には敵わない
忘年会当日、私は仕事場から直接会場に向かう事にした。
時間は午後六時からで会場までは三十分もかからない。
「っ!寒~」
会社から一歩外に出れば冷たい北風が強く吹付けてくる。
私は身を縮ませながら足早に駅へと向かい始めた。
その時、背後から車のクラクションが聞こえてきて、
何気なく後ろへと振り返った。
「…」
中々出ない電話に少し苛立ちが見えてきた椎名。
既に忘年会は始まっていて、各部署の人間で会場は盛り上がっている。
痺れを切らした椎名は電話を一度切り、lineで相手に連絡を取ることにした。
数時間前にも相手とやり取りをして、
今日の忘年会は参加予定です!と返信が返ってきた。
「何してるんだ、迷子にでもなったか」
椎名は‘今何処にいる‘と相手に打ったが、当然すぐには既読にはならない。
「椎名~」
その時遠くから上司に呼ばれ、
椎名は返信を気にしつつ携帯をジャケットの裏ポケットに閉まって上司の元へ近寄っていった。