神楽先生には敵わない
「....あれ?随分遅かったね」
身体を起こし、腰に枕をあてながら本を読む先生が私の気配に気づき、
本から私へ目線を向ける。
「すみません、ご飯作るの少し手間取っちゃって」
そんな言葉は上っ面で、
本当は高鳴る鼓動を沈めるために少し時間が欲しかったから。
また変に意識しないように気持ちを切り替えたったのだ。
「あ、いい匂いするねぇ。腹減ってたから嬉しい」
先生の鼻に出来立ての温かいうどんの香りが届くと、
読みかけの本を閉じてベッドの上に置いた。
「熱いんで、気をつけて食べて下さいね。じゃ、私は帰りますから」
「へ?」
「先生の容体気になっただけですから」
私はサイドテーブルに食事一式が乗ったおぼんを置いて言った。
しかし先生はきょとん顔のまま私を見つめる。
「食べさせてくれないの?」
「はぁ!?」