神楽先生には敵わない


朝は天気だったのに、昼過ぎから曇りだししまいにはポツリポツリと雨が降り始めてしまった。



「雨....降ってきちゃったなぁ....」



ふとカーテンの隙間から窓の外を見下ろすと、

自宅のアパートの前に一台の車がハザードを出して止まっていた。





「....」



運転席の窓がほんの少しだけ空いた隙間から、
煙草の煙がふわっと浮き上がる。


その時私が傘をささずコンコンと助手席の窓をたたく音に気付くと、相手は助手席のロックを外した。



「ごめんね、急に」

「いえ、大丈夫です」




そう言って灰皿で煙草を捻じ消したのは先生だ。



私が車に乗り込むなり、

濡れちゃったね、と近くにあったタオルで咄嗟に頭や服を軽く拭いてくれた先生。





「すみません....ありがとうございます」



何だかさり気ない優しさが妙に恥ずかしく感じ、つい俯きながら呟く。



そのタオルから微かに香る先生の匂いが何だか胸を熱くさせてしまう....。



「あ、あの今日は何か話でも?」


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