神楽先生には敵わない
Act.4 正装の先生
「北村あつし先生?」
「知らないのか!?漫画界の大御所だぞ!」
長い長い梅雨が終わりかけになってきた、七月の中旬。
会社で仕事をしていたとき編集長に呼ばれてデスクに行くと、
聞き覚えのない人の名前を言われ私は頭を傾げた。
「まぁ、説明は後にして。今週の日曜日北村先生の誕生日会がホテルで盛大に行われるんだが、お前言って来い」
「私が....ですか?」
「俺は忙しいからラブリー代表として出席してくるんだ」
「....どうせ、大好きな釣りに行くんですよね」
私は知っていた。
編集長は面倒な仕事を私に押し付けて、
趣味である釣りを行っていることを。
冷たい眼差しの私に編集長はびくつきながら、うっうるさい!と逃げるように、デスクから立ち上がり去って行った。