神楽先生には敵わない


「北村先生」



先生は相手を見るなり、掴んでいた私の腕を離しそのまま握手を求めた。



ーーこの人が北村あつし先生なんだ!



もっと中年の人なのかと思っていたが、
実際は白髪頭の何処にでもいるおじいちゃんのような人だった。


「今日は随分子綺麗なんだね」

「そりゃ先生の誕生日パーティーですから、汚い格好は出来ませんよ」



握手をしながら談笑する二人。

そして北村先生はふと私に目をやる。




「こちらの若いお嬢さんは?」

「あっ!初めまして月影出版社から来ました、櫻井みちると言います!この度はおめでとうございます!」



ご本人から声を直接かけられ、一気に緊張度がMAXになる私。

どきまぎしながらも硬い挨拶をしながら頭を下げると、月影さんか。とふぉっほっほと優しく笑い返してくれた。



「ちなみに今、僕の担当者なんですよ」



先生はそう言って、おもむろに私の肩を手で抱いた。


そして自分の方へひきよせてきた。





< 37 / 159 >

この作品をシェア

pagetop