神楽先生には敵わない
「北村先生」
先生は相手を見るなり、掴んでいた私の腕を離しそのまま握手を求めた。
ーーこの人が北村あつし先生なんだ!
もっと中年の人なのかと思っていたが、
実際は白髪頭の何処にでもいるおじいちゃんのような人だった。
「今日は随分子綺麗なんだね」
「そりゃ先生の誕生日パーティーですから、汚い格好は出来ませんよ」
握手をしながら談笑する二人。
そして北村先生はふと私に目をやる。
「こちらの若いお嬢さんは?」
「あっ!初めまして月影出版社から来ました、櫻井みちると言います!この度はおめでとうございます!」
ご本人から声を直接かけられ、一気に緊張度がMAXになる私。
どきまぎしながらも硬い挨拶をしながら頭を下げると、月影さんか。とふぉっほっほと優しく笑い返してくれた。
「ちなみに今、僕の担当者なんですよ」
先生はそう言って、おもむろに私の肩を手で抱いた。
そして自分の方へひきよせてきた。