神楽先生には敵わない
ーードキッ!
自分の顔が一瞬で赤くなるのをまじまじと感じた。
優しく肩に触れる先生の手から服を通って温もりと、微かに感じる指の力。
抱き寄せられたせいか私の目線の高さにはすぐ近くにネクタイが見える。
こんなにも近くで先生を感じたのは、
あの雨の日以来。
「....」
鼓動を早めたまま見上げると先生は相手と楽しそうに談話中。
だけど肩に触れたままの手は力を弱めることなく、しっかりと掴んだままだ。
ーー何でこんな時に先生に会っちゃうのかな....。
もっと髪型も美容院でセットしてくればよかった。
新しいファンデやリップを下ろしてメイクも決めてくればよかった。
服も新たに新調してくればよかった。
もっと自分の一番綺麗な状態で会いたかったな。
無意識に悔やむんでしまうのは、
きっと正装の先生を見てしまったからかもしれない。