神楽先生には敵わない
だが、それは束の間の喜びだった。
通達がきた次の日。
初出勤したみちるに部の長が配属先のミスを認めた上で、
みちるは元々漫画部署へ配属が決まっていたと告げてきたのだ。
たしかに出版社へ就職しても、
自分の希望する部署へ行くことは難しいと事前に知らされていた。
だからファッション部に配属が決まった時は本当に嬉しかったのに
○回想、出版社内
異動を告げられたその足でみちるは漫画部署へと向かい、編集長に挨拶する為に室内へと入った。
ずらりとデスクが並び壁際には発行している漫画雑誌や単行本のポスターが貼られている。デスクに向かう社員は疎らで長であろう一番奥にある一際目立つデスクももぬけの殻だった。
みちるは近くにいた社員に今日付で配属された事と挨拶の為編集長を探していると告げれば、
部屋の一角にある黒いバリケードがされている打ち合わせ室にいると教えてくれた。
みちる「…」
恐る恐る近付けば男性二人の声が聞こえてきて、一気に緊張感が増す。
打ち合わせがたまたま終わったようで、椅子から立ち上がる音が同時に聞こえてきた。
みちるは打ち合わせ室から最初に出てきた男性へあのっ!と声を掛けその場で頭を下げた。
みちる「今日から此方に配属された櫻井みちるです!宜しくお願いします!」