神楽先生には敵わない

みちるちゃんが買ってきてくれたモンブラン。


原稿が終わったら食べてくださいと今日差し入れしてくれたものだ。




「許してね~」


彼女に若干の後ろめたさはあるものの、
僕はそのままモンブランに掴み冷蔵庫から取り出すと、
その場でパクリと齧りついた。


甘さ控えめの上品な味で、栗の香りが一瞬で口の中を通って鼻へと突き抜ける。

僕の好きな味の好みまでも知り尽くしているみちるちゃんの笑った顔がふと、目の浮かんだ。



彼女に出会った事で創作意欲が高まったと思う。


今流行りのものを聞いてみたり、同年代から見てこの状況はどうだろうとか、

作品に対してのリアリティが上がったと編集長にも言われた。


たしかに周りにはおばちゃんばかりだし?

こんな引きこもりな生活ばかり続けていれば、
話す相手も出会う人間も限られてくるし?



そこらへんの女子高校生に声をかけた日には仕事失う可能性だってあるし…。



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