神楽先生には敵わない
僕自身にとってみちるちゃんの存在が何によりも大事であることは、重々わかっているつもり。
仕事に一所懸命な姿も、
たまに怒り出す顔も、
すぐ顔を真っ赤にさせる一面も、とても愛しいと思う。
それが自然と担当者以上の感情に変わって、あんな事にしてしまったに違いない。
「ん~、美味しかった」
あっという間に平らげたモンブランのクリームが指先についている事に気づき、
僕は舌先でペロリと舐めあげた。
彼女はどの道を選ぼうと僕は何も言わないつもりだ。
まだ若いし、自分だけの都合だけでみちるちゃんの人生を決めつけたくないから。
彼女が思うようにすればいいんだ。
おじさんの戯言なんて聞く必要なんかない。
”先生!”
「まだまだ子供だな、僕も」
脳裏に過る笑顔を自分だけのものにしたいなんて、
口が裂けても言えないけどね。