神楽先生には敵わない
「何が無理なんだ、よくわからん」
はぁと溜息ついたあと、ビールいおかわり~とジョッキを持ち上げ近くにいる店員に合図を送った。
先輩が言う通りその話は願ってもない話だ。
自分が希望していた部署に配属なんて迷う理由なんてない。
今すぐにでも行って仕事に就きたいと思う。
ーーーでも。
私がいなくなったら先生はどうなるんだろう。
ちゃんと仕事するかな、また朝からパチンコに入り浸るんじゃないか。
原稿掘っぽり投げて気ままに散歩してるんじゃないか…。
私が居なくなれば新しい担当がついてサポートすると思うけど、
そうなったら私と先生の関係は終わり、この先の関わりはなくなるという事だ。
「…」
寂しくないと言ったら嘘になる。
先生に翻弄されっぱなしの数ヶ月だったから、
それが急に無くなると思う何だか、ぽっかり穴が空いたような虚しさがある。
先生この前話、どう受け止めたのかな…。
「みちる!」
「ーーーっ、はい!」
自分の世界に入り込んだ私を先輩が現実へと呼び戻してくれた。
「とりあえず真面目に考えろ。今回は声かけられたけど次は無い」
真っ直ぐ私を見つめる先輩に眼差しが真剣さを感じさせる。
私はわかりました、と小さく頷くことしか出来なかった。