神楽先生には敵わない
Act.8 私と僕の距離感
「…一緒だとはなぁ」
一方的に切れた電話。
名前を告げる声にまさかとは思ったけど…。
ーーー呼び捨てされてた。
僕なんかまだ、ちゃん付なのに。
はぁ~と深い溜息をしたあと、椅子に大きく寄りかかった。
別にみちるちゃんが誰といようと、
何してようといいじゃない。
僕は無関係なんだから。
と、思い込んでも胸の靄が簡単には晴れてくれない。
寧ろどんどん靄は濃くなっていくようだ。
朝見た二人の姿が再び脳裏に蘇ると、
何とも言えない気分になる。
その結果今日は全くと言っていいほど仕事が手につかなかった。
「単純だなぁ、僕は」
机の上にある煙草に手を伸ばそうしした瞬間、
ピンポーンと玄関のチャイムが鳴った。
出前で頼んでいたピザ屋かと思い、
書斎から出て誰もいないリビングを抜けそのまま玄関へ向かった。
「えっと、おいくらだっけ~?」
俺はそう言いながら玄関の扉を開けた。
「!」