ポーカーフェイス
「ここに悠翔が死んだら泣くヤツがいるんだから。…ね?」
尋翔は絡めた小指を愛おしそうに見つめながら言った。
「ぅえ…?」
「ん?」
鼻声の悠翔がはじかれたように顔を上げると、尋翔は微笑みながら顔を上げ、首を傾げた。
「泣く、ヤツって…?」
「俺の事に決まってんじゃん。それに、母さんや父さんもね」
「ウソ……」
「ホント」
悠翔は、自分が嫌われているものだと思い込んでいた。
今まで親にかけてきた迷惑は天文学的数値だ。
きっと、生まれて来なければ良かったと思われているの違いないと思い込んでいた。
「父さんも母さんも、お前の事、大好きだよ」
「ウソ、だ……」
信じられなかった。
今までの行いは、お世辞でも良い行いとは言えない。
周りはいつも、2言目には「尋翔」「尋翔」ばかりで、自分自身、生まれてこなければ良かったと思っていた。存在しなければ、こんな思いしなくて済んだのに、と。
「大丈夫。みんなお前の事、見てるから。こんな事しなくたって、お前の事見てるから」
子どもをあやす様な声にほっとしてしまった悠翔。
これでは本当に尋翔は兄みたいではないか。
いつもなら、「でけぇ口叩いてんじゃねぇよ!!」と、叫ぶ悠翔だが、
「うん…。………うん…」
ただ頷く事しかできなかった。