ポーカーフェイス
「お。いたいた。…おーい!」
尋翔が大きく手を振った先には、見慣れた顔が。
それがこちらに気付き、笑顔で手を振り返してくれる。
「あれ…?」
「Ciao!お久しぶり、2人共!元気してたかい?」
そう流暢なイタリア語を話すのは、中学、高校と2人の悪友である神之間廉(かみのまれん)だ。
「廉じゃねぇか!久しぶりだなぁ!」
懐かしい友達の顔に、少しながら悠翔は興奮気味だ。
「È vero.よくテレビとかで見てるよ。流石元演劇部だねぇ。迫真の演技さ」
「おぉ、サンキュな」
「お前もお前で、相変わらずなんだな」
そう言ったのは、腕組みをしている尋翔で。
「ははっ。キミもÈ come al solito.変わんないね、2人共」
「それは褒め言葉なんか?」
「さぁ?Quale è? 」
おどけて言った廉は、お得意のウィンクを男2人にかました。
「うわ。マジで変わってねぇのな、お前。今でも女、とっかえひっかえしてんの?」
廉も、いわゆるイケメンと呼ばれる分類の人間だ。
中学、高校の頃は3人合わせてよく、「イケメン」「イケメン」と騒がれたものだ。
そんな廉は、女癖が悪かった時期があり、次の日には女が変わり、また次の日には違う女になり…と、女に関して良いうわさが余りたたなかったものである。
「Ma dai!そんなワケないだろ。今はちゃんと就職もして、」
そこで切った廉は、左手の薬指を2人に見せた。
「結婚してるさ」
そう笑った彼は、今までに見た事のない幸せそうな顔をしていた。