ポーカーフェイス

「わぁお。兄思いのいい弟なのもCome al solitoなのかい?」

「おめ、気づいてねぇかもだけど俺らイタリア語全然分かんねぇだかんな」

「知ってるさ。ワザとだよ」

 
 廉は、悩殺ウィンクをかました。


「うげ」


 効果はバツグンだ。


「性格悪いって言われんだろ?」

「あぁ。よく、ね」

「だろーな」

「それで?仕事沢山で嬉しい限りなのに、なんでオレを呼んだのか、肝心なとこを聞きそびれていたね」

「あー。まぁ、息抜きできればって、思ってさ。…てか、俺が単にお前に会いたいなって……思っただけだから」

「っ!」


 小さく消え入るような最後の発言に、廉は耳を疑った。

 耳まで真っ赤な尋翔を、廉はジィ…と見つめる。


「っんだよ!!」

「…ごめん。『てか』から先がよく聞こえなかったんだけどさ、もう1回言ってくれないかい?」

「っ!!!てんめ、聞こえてたろ!さっきの反応はぁ!」

「えー?なんの事?」


 隣に座っている尋翔に、廉は抱き着いた。

 と、そこへタイミングが良いのか悪いのか、悠翔が戻ってきた。


「………おめーら、何やってんの」


 その眼は語る。


 「お前ら、きしょいわ」


「痛いから止めて。その視線」

「悪ぃのは、廉だかんな」


 とか言っときながら、廉は尋翔から離れようとはしなかった。



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