先生と私と元彼と。
第六話†GWはお出かけ
それは舷の一言から始まった。
『GW、何処か出かけよぜ』
四月も後半になり、
世間はGWの話題で持ち切りで
TVや学校でもそんな話しを
しているクラスメイトたちもいたのを
頭の片隅で思い出していた。
『私はいいけどさ、
舷は教師なのに大丈夫なの?』
お出かけはしたいし、
誘ってくれるのも嬉しいけど
万が一に学校関係者とか
生徒に会ったりしたら
当然責められのは舷だ。
『大丈夫だ、
泊まる旅館は此処から
結構遠いし、知人の所で
この辺の奴らは知らねぇよ』
「ふん」と鼻で笑って
コーヒーを淹れにキッチに行った。
『そっか、なら行きた』
舷が大丈夫って
言ってるんだから
きっと大丈夫なんだろうと
納得して、後ろから抱き着いた。
『いい所だから
椛と行きたかったんだ♬*.+゜
それに、最近は
色々あって疲れてるだろう?』
含み笑いをした舷を見て
何のことかすぐに解ったから
私は苦笑いで返した。
『ありがとう』
心身共に疲れ気味だったのを
気付いてくれていたことが
とても嬉しかった。
**当日**
私は舷の車に乗り、
その知人がやっているという
旅館に向かっているところだ。
『ねぇ、
その知人ってどんな人?』
舷と付き合いだして
日が浅い私には
友人関係など知らないのだ。
『親友の弟』
眼鏡を直しながら
前を向いたまま
私の質問に答えた。
そう、舷は
運転するときのみ眼鏡をかける。
これはこれでカッコイイから
誰にも見せたくない。
『へぇ~
そうすると、舷より年下なんだ?』
「まぁな」
と言ってから
煙草を吸い出した。
家でも吸ってるから今更気にしない。
車を走らせること三時間。
その親友の弟さんが
やっているという旅館に着いた。
外観は凄く素敵で
中も清潔感溢れる
綺麗なロビーだった。
「舷にぃさん、
いらっしゃい」
元気よく舷に挨拶した人は
如何にも人懐っこそうな
二十代前半の男性だった。
『久しぶりだな惣弥』
名前を呼ばれて嬉しかったのか
さっきよりも更に目を細めて笑った。
『須海惣弥、こいつがさっき
車の中で話した親友の弟だ』
須海さんに向けてた視線を
私に戻し、紹介してくれた。
『初めまして、
舷の恋人で糸納椛といいます』
体を折ってお辞儀をした。
『お前、敬語使えんだな』
失礼だなぁ。
ぷぅっと頬を膨らますと
舷が指で突いてきた。
『普通に使えるよ、
私をなんだと思ってんのさ』
そりゃぁ、
普段は敬語なんて使わないけどさ。
『お前、学校じゃ
年配の先生にすらタメ口だろう』
確かにね。
『いいじゃん、鷹箸先生とか
気にしないで話してくれるし』
私たちの言い合いを
黙って見ていた須海さんが
遠慮がちに声をかけて来た。
「糸納さんて、
舷にぃさんの生徒さんなの?」
ぁぁ、そこか。
そのツッコミは尤もかもね。
『舷は担任ですよ。
訳あって、最初は
“仮”だったんですけど
いつの間にか、
“本当”の恋人になってました』
ね? と舷に同意を
求めると照れたのか
“あぁ”とか“まぁ“とか
言い淀んでいる。
須海さんは放心状態だ。
今も時々思う。
あの日、舷に会わなかったら
今頃、私は元彼に捕まってたか
逃げ切れたとしても
一人ぼっちの誰もいない
家に今でも帰っていただろう。
『惣弥、この話しは
後でゆっくり話してやるから
とりあえず、部屋に案内しろ』
このままじゃ埒があかないと
ふんだ舷が話を無理矢理変えた。
「あっ、はい」
硬直状態が解かれた須海さんが
私たちの荷物を持って、
部屋に案内してくれた。
『夜時間あるなら
仕事終わりに此処に来い。
そしたら、俺たちの話しをしてやる』
舷の言葉に少し
納得がいかなさそうだったけど
渋々「わかりました」と言って
私たちの部屋を出て行った。
仕事が終わったのか零時を回る
少し前に須海さんは来た。
「舷にぃさん」
襖の向こうから聞こえた声は
少し拗ねてるような感じで
私は心の中で小さく笑った。
『惣弥か、入って来い』
呼ばれて襖を開けて入って来た。
『こんばんは』
内心も落ち着いたところで
礼儀として挨拶をした。
「こんばんは」
やっぱり、私が
気に入らないらしい。
落ち着いたのに
また、心の中で笑ってしまった。
『どうした? 機嫌悪いな』
舷もなんとなく
彼の素っ気なさに気付いみたい。
「そんなことないです」
言葉とは裏腹に
声は機嫌の悪さを物語っている。
『私、席外そうか?
久しぶりに会ったなら
積もる話しもあるだろうしさ』
半分腰を浮かして
立つ姿勢をとりながら
そんな言葉を投げかけた。
『椛』
制するような舷の声を
半ば無理矢理シカトして
バッグから財布と携帯を
抜き取り、襖をパタンと
態と音を立てて閉め部屋を出た。
『終わった頃に電話してね』
閉める直前に舷にかけた言葉。
さてと、とりあえず
自販機自販機と。
お財布から小銭を
取り出して無糖紅茶のボタンを
迷いなく押した。
ベンチに座って携帯を開く。
シーンと静まり返る
旅館の廊下は
ひんやりとしていた。
『さすがに夜中は誰も居ないなぁ』
独り言を呟いてみても
聞いてる人は居ない。
彼の私に対する態度は
お気に入りの
おもちゃを取られた
幼児のような感じにとれた。
歳は彼の方が上だけど、
中身は小さな子供のようだ。
ただ、よほど舷のことが
好きなのは解った。
部屋を出て三十分後
静まり返る廊下に
携帯の着信音が
いやに大きく響いた。
『はいは~い』
大きな声に
ならないように電話に出た。
『惣弥は帰ったぞ
お前、今何処だ?』
意外と早かったなぁ(笑)
『自販機の前に居るよ』
それだけ伝えて
電話を切ってから
三分と経たずに舷が来た。
『GW、何処か出かけよぜ』
四月も後半になり、
世間はGWの話題で持ち切りで
TVや学校でもそんな話しを
しているクラスメイトたちもいたのを
頭の片隅で思い出していた。
『私はいいけどさ、
舷は教師なのに大丈夫なの?』
お出かけはしたいし、
誘ってくれるのも嬉しいけど
万が一に学校関係者とか
生徒に会ったりしたら
当然責められのは舷だ。
『大丈夫だ、
泊まる旅館は此処から
結構遠いし、知人の所で
この辺の奴らは知らねぇよ』
「ふん」と鼻で笑って
コーヒーを淹れにキッチに行った。
『そっか、なら行きた』
舷が大丈夫って
言ってるんだから
きっと大丈夫なんだろうと
納得して、後ろから抱き着いた。
『いい所だから
椛と行きたかったんだ♬*.+゜
それに、最近は
色々あって疲れてるだろう?』
含み笑いをした舷を見て
何のことかすぐに解ったから
私は苦笑いで返した。
『ありがとう』
心身共に疲れ気味だったのを
気付いてくれていたことが
とても嬉しかった。
**当日**
私は舷の車に乗り、
その知人がやっているという
旅館に向かっているところだ。
『ねぇ、
その知人ってどんな人?』
舷と付き合いだして
日が浅い私には
友人関係など知らないのだ。
『親友の弟』
眼鏡を直しながら
前を向いたまま
私の質問に答えた。
そう、舷は
運転するときのみ眼鏡をかける。
これはこれでカッコイイから
誰にも見せたくない。
『へぇ~
そうすると、舷より年下なんだ?』
「まぁな」
と言ってから
煙草を吸い出した。
家でも吸ってるから今更気にしない。
車を走らせること三時間。
その親友の弟さんが
やっているという旅館に着いた。
外観は凄く素敵で
中も清潔感溢れる
綺麗なロビーだった。
「舷にぃさん、
いらっしゃい」
元気よく舷に挨拶した人は
如何にも人懐っこそうな
二十代前半の男性だった。
『久しぶりだな惣弥』
名前を呼ばれて嬉しかったのか
さっきよりも更に目を細めて笑った。
『須海惣弥、こいつがさっき
車の中で話した親友の弟だ』
須海さんに向けてた視線を
私に戻し、紹介してくれた。
『初めまして、
舷の恋人で糸納椛といいます』
体を折ってお辞儀をした。
『お前、敬語使えんだな』
失礼だなぁ。
ぷぅっと頬を膨らますと
舷が指で突いてきた。
『普通に使えるよ、
私をなんだと思ってんのさ』
そりゃぁ、
普段は敬語なんて使わないけどさ。
『お前、学校じゃ
年配の先生にすらタメ口だろう』
確かにね。
『いいじゃん、鷹箸先生とか
気にしないで話してくれるし』
私たちの言い合いを
黙って見ていた須海さんが
遠慮がちに声をかけて来た。
「糸納さんて、
舷にぃさんの生徒さんなの?」
ぁぁ、そこか。
そのツッコミは尤もかもね。
『舷は担任ですよ。
訳あって、最初は
“仮”だったんですけど
いつの間にか、
“本当”の恋人になってました』
ね? と舷に同意を
求めると照れたのか
“あぁ”とか“まぁ“とか
言い淀んでいる。
須海さんは放心状態だ。
今も時々思う。
あの日、舷に会わなかったら
今頃、私は元彼に捕まってたか
逃げ切れたとしても
一人ぼっちの誰もいない
家に今でも帰っていただろう。
『惣弥、この話しは
後でゆっくり話してやるから
とりあえず、部屋に案内しろ』
このままじゃ埒があかないと
ふんだ舷が話を無理矢理変えた。
「あっ、はい」
硬直状態が解かれた須海さんが
私たちの荷物を持って、
部屋に案内してくれた。
『夜時間あるなら
仕事終わりに此処に来い。
そしたら、俺たちの話しをしてやる』
舷の言葉に少し
納得がいかなさそうだったけど
渋々「わかりました」と言って
私たちの部屋を出て行った。
仕事が終わったのか零時を回る
少し前に須海さんは来た。
「舷にぃさん」
襖の向こうから聞こえた声は
少し拗ねてるような感じで
私は心の中で小さく笑った。
『惣弥か、入って来い』
呼ばれて襖を開けて入って来た。
『こんばんは』
内心も落ち着いたところで
礼儀として挨拶をした。
「こんばんは」
やっぱり、私が
気に入らないらしい。
落ち着いたのに
また、心の中で笑ってしまった。
『どうした? 機嫌悪いな』
舷もなんとなく
彼の素っ気なさに気付いみたい。
「そんなことないです」
言葉とは裏腹に
声は機嫌の悪さを物語っている。
『私、席外そうか?
久しぶりに会ったなら
積もる話しもあるだろうしさ』
半分腰を浮かして
立つ姿勢をとりながら
そんな言葉を投げかけた。
『椛』
制するような舷の声を
半ば無理矢理シカトして
バッグから財布と携帯を
抜き取り、襖をパタンと
態と音を立てて閉め部屋を出た。
『終わった頃に電話してね』
閉める直前に舷にかけた言葉。
さてと、とりあえず
自販機自販機と。
お財布から小銭を
取り出して無糖紅茶のボタンを
迷いなく押した。
ベンチに座って携帯を開く。
シーンと静まり返る
旅館の廊下は
ひんやりとしていた。
『さすがに夜中は誰も居ないなぁ』
独り言を呟いてみても
聞いてる人は居ない。
彼の私に対する態度は
お気に入りの
おもちゃを取られた
幼児のような感じにとれた。
歳は彼の方が上だけど、
中身は小さな子供のようだ。
ただ、よほど舷のことが
好きなのは解った。
部屋を出て三十分後
静まり返る廊下に
携帯の着信音が
いやに大きく響いた。
『はいは~い』
大きな声に
ならないように電話に出た。
『惣弥は帰ったぞ
お前、今何処だ?』
意外と早かったなぁ(笑)
『自販機の前に居るよ』
それだけ伝えて
電話を切ってから
三分と経たずに舷が来た。