大工さんに恋していいですか?おまけ追加中
「おい、博之、まさか、母さんの事、

まだ羽菜さんに話してなかったのか?」

私たちの後方から、お父さんの声が聞こえた。

振り返ると、お盆に、お茶と茶菓子を乗せたお父さんが、

入ってきたところだった。


「…今日、ここに来たら、わかる事だから。

結婚を決めてから、話そうと思ってたんだ」

そう言って微笑んだ博さんはとても悲しげだった。


「全く、そんな大事な事は、もっと早く伝えるべきだろ。

すまないな、羽菜さん」

そう言って頭を下げるお父さん。

私は身振り手振りで。

「そんな、博さんも、話し辛かったんだと思います。

…あの、お母さんの事、どんな人だったか、聞いてもいいですか?」


恐る恐る訪ねると、お父さんはニコッと笑って承諾してくれた。

「博之を産んだのは、家内がまだ19の時だ・・・。

高校卒業したばかりで、私は大工見習い、家内には苦労を掛けた。

博之は、病気一つしないで、すくすく育った。私も家内も、

それはそれは幸せな時間だったよ。

でも、博之が16の時、高校行かず、私の後を継ぐと言い出して、

反対する私をよそに、家内は博之と二人、勝手に進路を決めた。

…まあ、私は嬉しかったけどな。」


懐かしみながら、お父さんは話しを続ける。
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