大工さんに恋していいですか?おまけ追加中
オレの方を向いたまま少しずつ遠ざかっていく羽菜は、

一生懸命手を振っていた。

・・・その行動が、なぜか愛おしくてたまらなかった。


…これは、彼女への恋心なんだろうか?


まだ会って、3回目。

これを恋だと呼んでもいいのだろうか?


その答えは、出る事はなかったが、

ただ思ったのは、もう一度、羽菜に会いたいと心底思った事だった。



…現場に戻ったオレを、多田さんが待っていた。

「どこに行ってたんですか博さん?」

「・・・え?あ、ちょっと、・・・友人がたまたま通りかかって、

話ししてきたんだ・・・あの、なんか聞く事あった?」


オレの質問には答えず、数秒、オレを見つめた多田さん。

いたたまれないオレは、目線を泳がせた。


「顔、赤いですよ?」

「・・・き、気のせいだよ。で?なんか聞くことは?」

「あ、はい、この建具なんですけど、色が気に入らないって施主さんが・・・」


…何とか話を逸らすことに成功したオレは、心の中で、

安堵の溜息をついていた。
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