私が髪を切った訳
私が髪を切った訳



いやなことがあった。




こんなに最悪の気分になったのは、いつぶりだろう。




みるみるうちに心がただれて、裂けて、凍りついていく。






キスなんて、はじめてじゃないけど。






それでも、好きでもない人に奪われる感覚は、全然ちがう。





すごい悪夢から飛び起きた後みたいに、ひどい虚脱感と、途方もない落胆が襲い、身体が鉛のように重い。








「どうかしたか?」








おおきく傾いた夕明かりがかろうじて教室に差し込む。




暗いなと、担任の先生が照明のスイッチに触れた。




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