1000の雫
「あーやかましかった」

翠は門に手をおきはぁとため息をついた。

いつものことながら騒がしく帰るのは幼稚園のころからかわらずなのだが、

今日はやけにつかれた。

そして、これから晩ごはんを作らないといけない憂鬱感も原因だろう。

きいっと軽い音がする門をひらいた。

次の瞬間、
翠の頭の頂点にすこーんと何か落ちてきた。

「いった!えぇ??」

頭の一点に集中するような痛みの原因を探すが見当たらない。

「な、何だろう??」

なんか踏んだり蹴ったりな感じのもやもやとした気持ちをかかえつつ、
家の玄関へと向かった。

玄関までは少し小さな庭になっていて、青々とした芝生にはガーデニングについ最近はまったお母さんの花たちが風に揺られていた。

玄関前にある二段の階段を踏み越えるようにあがると鞄の中をかざごそとあさぐり目当てのものを探す。

「さてと、鍵鍵っと…あった、」

ガチャっと玄関をあけ
これからの計画を考えながら、二階にある自分の部屋へ向かっていった。
















「うーーんー…この辺りなんだけどなぁー」


全身黒の姿でうろうろしている一人の少年がいた。
普通なら不審者扱いなのだが、

透明感のあるブロンドの髪とすらっとした身長のため、全身黒でも絵になっていた。



うっかり大切なものを落としてしまい思いあたる場所を探し回るが…

見つからない。

ただ探しているだけでは見つからない代物なためこの落とし主は目を閉じてしばらくじっとしていた。



ぼーっと突っ立っている感じだか、ちゃんと何かを感じとっているのだ。




すると徐々に光を感じるような気配がする方向が分かってきた。

「よし、あっちか」

早く落としたものを拾いに行くため走ろうとした矢先、

「まったく。あれ落とした人、歴史上初よ、あんたが。」



ギクッと動きがとまり壊れたおもちゃのような動きで後ろを振り向くと

ウェーブのあるロングの髪をなびかせ、
少しいたずらっぽい笑みを浮かべ仁王立ちした女性がたっていた。

前で腕を組み近寄ってきた。より胸が強調されているが、

そんなことはこの落とし主には興味がなく、むしろ早く逃げたかった。

「まぁ、あんたも分かっているだろうけど…あれなくしたら終わりだからね。」


「…分かってるって、だから死ぬほど探してるんだろーが」


目を反らし今もっとも言われたくない事を言われますます焦り、
とりあえず落ち着かせるためてを腰にあてた。

女はそんな落とし主を見てはぁとため息をつくと、
先程とはちがい心配するかのような困った顔をし、釘を打つように言い直した。


「…帰れなくなるんだから、しっかり見つけなさいよ、満和!」


「分かってるって!じゃーな」

満和はばっと翻し先程感じとった方向に向かい、夕闇へ消えていった。


「…まったく初日からどーなることやら」


ふぅと空を見上げ女も消えた。


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