1000の雫

「うーん、こんなもんか」

ぐつぐつと具だくさんのカレーの入った鍋の前にたちながら味見をすると、
ぱちっと火を消し台所から離れソファーへむかった。


ソファーに座りちらっと時計をみるとまだ6時半を過ぎだった。
両親が共働きなうえに、下の妹や弟達もまだ部活やら塾やらでまだ誰も帰ってくる気配がない。

たまーに翠が早く帰れる日はこうゆうときがあるのだが、

やはりしん、とした家の中はやることがなく退屈なので幼なじみの香子や葵を呼んでは遊んでいた。


「うーん、やっぱり香子呼ぼっかな」


うーんとのびをし、テーブルにあるはずのスマホを探すが、部屋に置きっぱなしなのを思いだした。


「あー…めんどくさいなぁーもー」


どっこいせっ、とおばあさんのように声を出して立ち上がると階段へ向かった。

階段をあがるとすぐに妹、弟の部屋があり小さな物置部屋の隣の部屋が自分の部屋だ。


もともとは両親が使ってた部屋だが、
高校生になったのをきっかけにここを使う事になり、ようやく念願の一人部屋を満喫することができている。

香子も来ることだし少し綺麗にしなきゃなぁと思いつつガチャっと部屋のドアを開けた。



「あれ?窓空いてる…」


開けた記憶がないのだが、もしかしたら先程部屋に来たときに何気なく開けたかもしれないなぁと思い直し、
ベッドの上に無造作に置いてあったスマホをとる。

その時背後の窓から身体を包むようにふわっと風がはいってきた。

まだ4月も半ばの時期でたまに心地よい風がはいってくるのだが、
もう日が暮れてしまっているため若干肌寒さを感じ閉めようと振り向くと…







窓の前に見知らぬ男が立っていた。





「……!!」



驚きすぎると声がでないってあるんだなーとパニックになりつつも思った翠だが、

一瞬外人かと思ったほど、きれいな髪と顔立ちをしていたのもあって、
突如現れた男から目が離せないでいた。


というか、ゆ、幽霊とか…??
気付いてないふりしたほうがいいよねー
…ホラー映画みたいにならないうちに、し、下に…



恐る恐る身体をドアの方へ振り向かそうと頑張っていると、



「あ、ごめん、ごめん。勝手にはいっちゃった。」


男が喋りはじめた。


「!」

え??幽霊じゃない…の??



とたん男が近寄ってくるやいなや

「ちょっと聞きたいことというか…知りたい事が…」



「…っ!!!~っきゃあああああああ!!!」

男の手が近づいてきて恐怖が頂点に達した翠はありったけの声で叫んだ。

今まで出なかった分吐き出したので相当大きい声になったので男が一瞬ひるんだ、


と同時に


「いっ!!いででで!!い、痛い!!痛い!!ストップ!ストップーー!!」


日頃の鍛錬のおかげか、どこでどう覚えたのか、
翠の防衛本能が働き、腕を締め上げ男が身動き出来ない状態にしていた。


「というか、触れるっ!?
てことは!あなた何なの!!?何の目的で入ってきたの!!?」


「ちょ…は、話すから!いてて!タンマ!タンマ!」


警察に取り押さえられた犯人のような図になっていた。


「離せるわけないでしょ!?」


…というか凶器とかもってないわよね??

不安を感じつつ、とりあえず翠自分のズボンの紐をとり手首を拘束しようと巻きはじめた。

とふと男の抵抗がなくなった。
と、同時に男が消えた。


「え?」


-というか-



「…ここどこ?」





男が消えた変わりに景色がかわっていた。

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