1000の雫
「あ、やっぱり」
中庭の奥の方には図書館の窓が面してあり、その窓を男がじっとみてたっていた。
「ねえ、いったい何なの?」
何も説明がなく黙っている男に話しかけるのだが、何も返答がなくいきなりしゃがみこんだ。
そして手招きされた。
「…?」
「…こっちこいって、あっ!しゃがんで!」
とりあえず四つん這いに近い体勢にかりながらなんとか男のとこへ近づく。
辿り着いたやいなや
窓からこっそり中を覗くよう指示された。
と、そこには本棚の間に中学の制服をきた少女がたっていた。
「…というかあの子透けてない??」
「あれを回収するのが俺の任務。」
「はぁ?」
若干質問の答にならないことを言われたが男の話しは続く。
「あれは魂の一部がこぼれたもの。」
「こぼれたもの?ってやっぱり幽霊…」
「こっちではそう呼ぶんだろうな、まぁそこで待っとけ」
そうゆうと男は壁に手を添えるとゆっくり消えた。
「えぇ!?」
中をまた覗くと、なんとあの少女の側に立っていた。
しばらくすると、淡い光が男を包み側にいたはずの少女がきえた。
「…消えた…というかあいつって…」
翠の背後から、ざぁっと風が吹き振り向くと先程図書館の中にいた男が立っていた。
-こいつ、死神なんじゃないの?-
翠を見下ろしている男に何も言えず黙っていると、
「…雫を1000集める任務がある、その雫を見つけるアイテムが翠、お前の中に入ってしまった。だから協力してほしい、」
「…その私の中にはいったものってとれないの?」
「今はとれない。
…でも、それはもともと雫を見つけるためのもので、終わったら自然に消滅するらしい…。
だからもしかすると、全部集め終われば自然と消えるはず…」
怒られてしゅんとなった子供のように顔を伏せ言葉を選ぶように説明をすると、
はぁと聞こえないようなため息をついた。
「ってほぼ強制じゃない…
んー…!!わかったわ!協力するしかないじゃない!
そうすれば元に戻るんでしょ!?」
半ばやけくそに翠が叫ぶと、
男がぱぁっと笑顔になり嬉しさのあまりか翠の手を両手で包みこみ、上下にふった。
「ちょ、ちょっと!」
「よかったあー!助かるよ!まじで!!本当ありがとう!!」
未だにぶんぶんと上下降られながら翠はとんでもないことに巻き込まれたことを再確認し、放心状態になった。
そのため誰か側にいることに気づかなかった。
「良かったわねぇ、おっさんじゃなく可愛い女の子で。満和?」
「…!!佐和さん!びっくりした!」
いきなりふたりの背後から声が聞こえたため二人はびくっとなった。
だが、満和と呼ばれたこの男は知り合いだったらしく佐和という女性に普通に話しかける。
そして翠めがけてずんずん歩きだし、
どーんと満和を押しどけた。
「え、えぇ??」
急な佐和の行動にびっくりし、ふたりを交互にみると、
佐和は今にも泣き出しそうな、
涙を我慢するような顔で翠を見つめた。
「実はね、今までのことは監…見守ってたのよ…」
「おい、今監視って言おうとしたろ?」
満和の野次を無視して続く。
「こっちの都合であなたに迷惑をかけたのにもかかわらず、快く協力して頂けることに感謝します。」
-快くではないんだけどなぁー-
翠は苦笑いを浮かべた。
「なので、あの世の第329区間オーナーとして協力して頂いている間、
全力であなたの不慮の事故、不幸がないようサポートします。」
「はぁ…」
なんだか得しているのかよく分からないサポートを手に入れた。
「そして、これは万が一のために渡しておくわね。翠ちゃん。」
「はい…」
そっと手に渡されたのを見てみると、
可愛いデザインのピンキーリングだった。
「?????」
「ふふふ~♪」
少しばかりの説明をうけ、
目の前が真っ暗になった。