ちょっと斜めな“おとぎ話”(短編)
「君は一国の王女なんだ。
自覚し給え。僕だって、君なんかと結婚などしたくないさ。
こっちにも愛している娘はいたんだ。
だが、立場というものがあるだろう。
政略結婚とは、そういうものじゃないか!?」
王子は感極まって息を詰まらせ、ふいに冷静さを取り戻すと、コホンと小さく咳払いした。
「君は、魔王にさらわれた事になっている。
苦肉の策だ。
我が国と、君の国の名誉を傷つけないための。
―――――帰るね!?」
王子の言葉に、姫はガックリとうなだれた。
「―――分かったわ」
<完>