あの日、あの時、あの場所で



「アキラくんと蓮次郎に二股かけてたんだって」






「ウザイ」




「大人しそうな顔してやるよね。」






「最低。」







「てゆーか、佃煮臭くない?」










体中から力が抜けていく。
膝がガクガクいって止まらない。





どうして


どうして


どうして。










気が付くと私はクラスの人皆に囲まれていた。



今まで普通に話していたあの子、この前教科書を貸してくれた子、一緒にお弁当を食べた子。





一緒に笑い合ったその顔に
今は冷笑が嘲笑が侮蔑が軽蔑が








「どうして…」








涙が溢れて止まらない。やっての思いで問いかけても答えてくれる人はもういない。









あたしは






一人だ。











ガラリとドアを開けて教室に入って来た女の子がガンッと大きな音を立てて私の前に炊飯器を乱暴に置く。




蓋を開けると炊きたてのご飯。
この臭いは…コシヒカリだ。








「食べなよ苺ォ。」






キャハハハハハと云う甲高い笑い声。私は堪らず教室を飛び出した。








酷い…あんな、お茶碗も無しに食べろなんて…!!






箸もない、しゃもじでご飯なんて…食べられないよ…!!









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