あの日、あの時、あの場所で
―――……
その後はほとんど無意識だった。
小腹が空いたのだが、
ご飯に一種のトラウマを植え付けられてしまった私には、
もうパンしか食べるものはない。
今から自殺をしに行く人間が腹を満たさせるのはどうかと思ったが、
やっぱりお腹を空かせてちゃ
死んでも死にきれねぇ。
近所のパン屋に行って
大切なヘソクリの半分を使って
きなこパンを買い占めた…―
そして今の現状にいたる。
私は福井県北部にある自殺の名所とされている東尋坊に向かって
電車に乗って田舎風景を眺めながらきなこパンを無我夢中に食べている。
きなこを辺り一面に撒き散らして食べてたから、変なオジサンに睨まれてしまった。
良いじゃない、今世ではこれが最後の食事なんだから。
最後くらい豪快に食べさせてよ…
本当は真っ白な服で、カレーうどんを勢いよく啜って食べたかったのに、
苺は我慢したんだよ?
後から後から涙が頬に伝い零れ落ちる。
私…私何もしてないのに―…
目的地の駅に着くと
苺は涙ときなこでグチャグチャとなった顔のまま、
走って東尋坊へ向かった。