恋の相手は小指サイズの俺様王子!?
「480円です」


蚊の鳴く声で言うと、サラリーマンはキャッシュトレイを無視し、500円玉をあたしに投げ
てよこした。


小銭は勢いよくカウンターを乗り越え、あたしの手をすりぬけて音を立てて床に落ちた。


「あっ」


と、慌ててしゃがみ込んで拾おうとするが、床に落ちた500円玉はそのまま転がり、カウンターの下に入り込んでしまった。


狭い隙間に手を入れてみるけれど、とても届きそうにない。


「すみません、500円玉が落ちてしまって……」


そう言いながら立ちあがると、そこにはもうサラリーマンの姿がなく、駐車場から車が遠ざかる音だけが聞こえてきたのだった。
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