縁の桜
刹那、御座船の船尾から火柱が吹き上がり、藍は思わず立ち上がり家茂の人形から離れた。


「あ!」

御座船に向かって懸命に泳いでくる龍斗の姿が藍の目に映る。

藍は龍斗と交わした会話を思い出す。

花火の感想を聞かせてくれと言った、温かな希望に満ちた瞳に胸が熱くなる。


髪に手をあて、龍斗に貰った桜の簪を確かめ

『生きたい、生きて再び龍斗に会いに行きたい』

と思った。


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