縁の桜
その昔。
等々力の山奥に人形使いの一族がひっそりと住む里があった。

ある時、その里に第14代将軍徳川家茂が家臣数名と共に訪れた。

精巧なからくり人形を作り操る里の人形浄瑠璃を観たいという家茂の要望に応え、里は演目として「八百屋お七」を見事に披露した。

総勢十数体もの人形がまるで実際に息づいているかのような人形劇に、感動した家茂は演目が終わり出てきた人形使いに更に驚いた。


舞台裏から出てきたのは村主の娘だと云う、まだたった10才の娘、ただ1人だったのである。


家茂は賛辞を述べた後、村主に冗談半分こう訊ねた。



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