Salty blood
『桜の花が凄く綺麗で…。月が…あなたを照らしてたの…。』

懐かしむように言った彼女をじっと見つめた。

『あのときの…あなたの血…少ししょっぱかったの。』

しょっぱい…血…!?

そう言われて、はっとした。

あの日は…満月だったのか…。

全然気づかなかった…。

『思い出してもらえたようね。』

彼女は嬉しそう微笑んだ。

でも、そんな君に思わず視線を逸らしてしまった。

肝心な名前はまだ思い出せていないから。

『ごめん…。僕は…』

そう言いかけた僕を遮るように君の声が重なった。

『わたしの名前…呼んで。』

その瞬間、微かに頭の中で何かが響いた。

今のは…

そして、無意識のうちに呟いていた。
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