生きる為に必要な三つのこと
「はあ…。つっかれた…。」
「たく…、倖子の所為だぞ…。何でもっと早く起きれねんだよ…。」
「だって、みつお君がくれた目覚まし時計がさ、」
「みつおって誰だよ。みつる、だろ。覚えてろよ。」
あたしが、幼い恋の相手の名前を覚えていられる程の記憶力があると思ってるのか。
そう聞いたら、間違いなく首を横に振るだろうから言わないでおこう。
廊下側から数えて三列目、後ろから二番目つー、なんとも微妙な位置のあたしの席。
まだ朝なのに、もう6時間目の様な気分だ。ほんと、疲れた。
「朝からハコセンと追いかけっこなんて、いいわね、若くて。」
「うっわ!ちょ、超びっくりしたじゃん!花ちゃん、いつ来たの!」
「今来たの。あと、花ちゃんはやめなさい。」
「なんでさ」
「可笑しいでしょ。17歳にもなって花ちゃんって。花でいいから。」
「えー。あたし、お気に入りだったのに。」
岸根花代(きしねかよ)、通称花ちゃん。改め花は、中学校からの友達。
元々、"はな"と読むんじゃないけど、呼び易くしたら、はなちゃんになっていた。
ばっちりメイクに大人っぽい体付きは、歌舞伎町がよく似合うと思う。(歌舞伎町なんていった事ないから、解らないけど。)
これでも人見知りなあたしにとって、中学校の入学式は関門だった。
今では信じられない位に、人見知りは治って、この昔話はいつも信じて貰えないけど。
孝が居るとは言っても、クラスが離れてたから、クラスで馴染めるかどうかが問題で。
“ねー、アンタ。火、持って無い?”
今ではお姉様にまとまった花だけど、昔は信じられない位のヤンキーさんだった。
正直、クラスでそう話掛けられた時は、この世の終わりをみた気がした。
変に馴れ合わないけど、突き放したりもしない、くーるびゅーてぃーってやつ。
最初は目が合うだけで貧血ものだったけど、徐々に話て、打ち解けた。
“入ってたとこ、抜けたのよ。もしもの事があって、倖に何かあったら嫌でしょ”
そう言って貰った中三の夏は、心臓が口からおちる位、嬉しかった。
ただ、入ってたとこ、っていうのは、何処か、怖くて聞けなかったけど。