先輩上司と秘密の部屋で
act.4 歓迎会の夜
視線が痛すぎて胃に穴が空きそうだと、杏奈は二日目の出社早々気が滅入りそうになる。
いくら嵐士と隼人がふたりきりになるのを阻止するためでも、会社では一緒に行動するべきではなかったと、後悔せざるを得なかった。
イケメンで長身のふたりが肩を並べ、朝のロビーを闊歩する姿は、もはや圧巻としか言いようがない。
嵐士と隼人が現れた瞬間、女子社員の目が一斉に色めき立ち、杏奈は言いようのない恐怖に駆られてしまった。
ふたりの注目度は、高校時代よりも明らかにレベルアップしている。
昨日隼人が告白されているのを目撃した時点で、会社では他人のフリをするべきだと、肝に銘じておくべきだったのだ。
「あ、杏奈ごめん。歩くの早かったね」
ちょっとずつ距離を取っていた事が隼人にバレてしまい、杏奈は引きつった笑みを浮かべる。
“いいから先に行って!”と目で訴えた時にはもう遅く、隼人は公衆の面前で杏奈の手をとり握ってみせたのだった。