先輩上司と秘密の部屋で
早くも隼人との関係について言及され、杏奈は呆気にとられてしまった。
学校でも会社でも、まず一番最初に興味を持たれるのは、やはり隼人との関係についてのことらしい。
「あーそれ、苗字同じだから、俺も気になったんだけど。ちなみに君みたいなちびっ子が営業に配属されてきた理由も、出来れば教えてほしいかな」
「ちょっと門倉(かどくら)くん。私が話してるんだから、横槍入れないで」
もうひとり隣から軽そうな男が会話に参加してきて、杏奈は思わず眉を潜める。
杏奈の身長は百五十センチにも達していない。さらに目が大きい割に鼻と口のパーツが小さいため、いつも歳がだいぶ下に見られてしまう。
この童顔こそが、杏奈にとって最大のコンプレックスだった。
「ほら、小白川さん怒ちゃったじゃない」
「あーごめんごめん。見た目は子供に見えるけど、体つきは大人だね。特にそのあたりとか」
この身長にしては目立つ胸の辺りに視線を感じ、杏奈はますます険しい顔つきになっていく。
こんなに堂々とセクハラを受ける理由は、どうせ縁故採用だろ、と心で非難されているからだと思った。