先輩上司と秘密の部屋で
「ねぇ、門倉。俺たちの関係、そんなに気になる?」
隼人は人の悪い笑みを浮かべながら、さっきから動揺している門倉にからかいの言葉を投げている。
杏奈はハラハラしながらそのふたりの様子を見守っていた。
隼人には非常に悪い癖がある。
唐突にそのことを思い出した杏奈は、いっそのこと自分が説明しようと、口を開きかけていた。
「あの……私たちは」
「深い仲だよね。俺と杏奈って」
隼人の発言に、周囲からどよめきの声があがる。
いくら告白されても特定の彼女を持とうとしない隼人のことを、周りの人間は“まさか女に興味がないのでは”と、常日頃から訝しんでいた。
「深い仲って……まさか、よ、よ、よめ……?」
「門倉の想像にお任せするよ」
「……お兄ちゃん!! お願いだからいい加減にして!!」
もう取り返しのつかないほど、自分たちは注目を集めてしまっている。
暴走する隼人の言動に杏奈の我慢も限界を迎え、思わず大声で叫び出してしまった。