先輩上司と秘密の部屋で
久しぶりに再会したというのに、杏奈の態度はどこかよそよそしくて、つい隼人も意固地になってしまった。
みんなの前で彼氏の話を持ち出された時の、杏奈の泣きそうな顔。
同棲していることがバレたのが、余程恥ずかしかったのだろう。
予期せず杏奈を傷つけてしまったことに、隼人は内心かなり落ち込んでいた。
いくら目の届くところに置きたかったからとはいえ、男だらけの営業部に配属させたのは間違いだったかもしれない。
杏奈と門倉の仲の良さに、心配事はさらに増える一方だ。
だから帰りが一緒になった嵐士を誘い、隼人は居酒屋で自棄酒に付き合わせた。
そうでもしないと、引きずってでも杏奈を家に連れ戻したくなってしまいそうだったから。
決して女に靡かない嵐士のことを、隼人は心から尊敬している。
だから杏奈のことも、手放しで任せられた。
たとえ隼人が異常なシスコンであっても、嵐士だけは偏見の目で見たりしない。
心許せる親友がそばにいたからこそ、隼人は安心して酔い潰れることができたのだ。
だからこそ、なぜこういう事態になったのか、隼人にも理由がわからない。
「ねぇ、キミ……」
起きる気配もないその背中に、隼人は恐る恐る声をかける。
間違いこそ起こしていないだろうが、この状況を責められたらかなり面倒くさいと最低な考えが頭を過ぎった。
「ん……」
僅かに身じろいだその身体が、ゆっくりと寝返りを打つ。
ようやく露見したその顔に、隼人は大きく目を瞠っていた。