先輩上司と秘密の部屋で
小刻みに震える上向きのまつげ。
ぷっくりと潤った小さな唇。
杏奈の顔から目が離せない自分に苛立って、嵐士は顔を顰める。
隼人が心配するのも無理はない。
裸の男が目の前にいるにも関わらず、杏奈はあまりにも無防備だ。
何をされても文句の言えないその軽率な行動に、嵐士のイライラはますます増加の一途をたどっていく。
薄手のTシャツ一枚に、下はショートパンツのみ。
いたって普通の部屋着なのにいたたまれなくなり、目線を下げたまま深いため息をついた。
たいして眠れなかったせいなのか、嵐士の機嫌はあまり思わしくない。
頭をスッキリさせたくて朝風呂に入ったのに、杏奈と出くわしてしまった途端またモヤモヤが復活した。
化粧をしていない杏奈は幼く見え、高校時代の姿を彷彿とさせる。
嵐士はその時、無意識に舌打ちした。
それから乱雑に身体を拭いて、服を身に付けていく。
音を立てるたび杏奈の肩がビクッと跳ねたが、いちいち気にするなと自分に言い聞かせ、無理やりにでも視線を彼女から引き剥がしていた。