ラブソングは舞台の上で
微妙な距離を保ち、他愛のない話をしながら、約20分。
私が住むアパートに到着した。
私が就職した年の晩冬に建てられた2階建てのアパートで、私は2階の角部屋に住んでいる。
このアパートには学生も何人か住んでおり、どこかの部屋がたかり場になっているのか、クリスマスパーティーで盛り上がっている声が聞こえていた。
送ってもらっておいてこのままサヨナラするのも味気ないと思った私は、口調としては社交辞令的に言ってみた。
「あのさ、上がってく?」
晴海はあからさまにギョッとした。
「えっ……?」
「私がお邪魔してばっかだったじゃん? 温かいお茶かコーヒーくらいなら、淹れてあげられるけど」
私はささやかなお礼のつもりでそう言ったのだが、晴海は急にムッとしてしまった。
「そういうことなら、やめとけよ」
「どういう意味?」
「俺だって男なんだから、送り狼になるかもしれないんだぞ」
「でも今まで2回も……」
一緒に眠ったりもしたけれど、何もなかったじゃない。
そういう意味ではわりと信頼してるのに。
「今までがそうだったからって、今日の俺が理性を保てるとは限らないだろ」
冗談を言っている顔じゃない。
本気で説教しているんだっていうことは、わかった。