ラブソングは舞台の上で
……という話をすると、アンジェラのメイド役、ともちゃんが笑った。
「私、あそこで採寸されるのは寒いと思ったから、この間直接おばちゃんのお家に行ったんだぁ」
「そうなの?」
そんな作戦があったのか。
知らなかった。
「えへへ、お茶とお菓子、ご馳走になっちゃった」
接しているうちにだんだんわかってきた。
ともちゃんはおっとりしているが、ちゃっかりもしている。
「明日香ちゃんにも声かけとけば良かったね。ごめんね、気が利かなくて」
「ううん、気にしないで」
大変勉強になりました。
体を動かしながらそんな話をしていると、制服姿の恵里佳ちゃんがやってきた。
「あれ、制服だ。恵里佳ちゃん、冬休みじゃないのかな?」
私は嫌われてしまっているから、何気ないことを直接彼女に聞くのはためらわれる。
わざわざ聞くことでもないし、と思っていると、疑問の答えはともちゃんが知っていた。
「恵里佳は受験生だから、学校の冬期講習に出てるみたい」
「受験なのにミュージカルなんてやって大丈夫なのかな」
「本人は余裕だっていってたけど、どうなんだろうね」
恵里佳ちゃんは更衣室に入って、でもオバサンたちとすぐに出てきてしまった。
採寸はしなかったのだろうか。
後から聞いたところによると、予め自分で測ってきたサイズを手渡していたらしい。
……そんな作戦もあったのか。
みんな、ズルい。
寒い思いをしたの、私だけじゃん。