ラブソングは舞台の上で

うちの会社は車通勤をしている人が多いし、会社のロゴが入った作業服を着て仕事をしているため、一度車を家に置き、着替えてから飲み会に参加するというスタイルがスタンダードだ。

だから必然的に、開始時間が少し遅めになる。

今日は午後8時からの2時間コースで、終了時刻は午後10時。

二次会は主に世代別に別れてカラオケやスナックへ行くのが通例だ。

「カラオケ、行けばいいのに。みんなファンになるよ」

詩帆さんの言葉を冷たい視線で流す。

私はいつも通り、

「お先に失礼します」

と言って帰路についた。

忘年会に沸く繁華街を我が家に向けて3分歩いたところで、後ろから声をかけられた。

「明日香!」

振り返ると、翔平がこちらに走ってきている。

「どうしたの? 二次会は?」

「抜けてきた。家まで送るよ」

「いい、いい。戻りなよ」

「今さら戻るのは気まずいって。歩きながらでいいから、ちょっと話そう」

翔平は先に歩き始めた。

好意を無下に断ることもできず、並んで歩くことにする。

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