ラブソングは舞台の上で

「今の男、誰?」

少し不機嫌な声で問う翔平。

「私のペア?的な男の子。ちょっと心配性なの。お酒を飲んだとき、何度か迷惑かけたことがあって、ね」

私の説明に、翔平はますます嫌悪の意を示した。

「あいつ、明日香のこと好きなんじゃないの?」

「……まさか」

私たちはあくまで舞台のパートナー。

恋愛的に私のことが好きなら、きっと立ち去ったりはしなかった。

「まぁいいや。他に明日香を好きだってやつがいても関係ない。とにかく俺は、今でも明日香のことが好きだから」

彼の声で聞く「好き」に、心臓が強く脈を打つ。

嫌いになったわけではない、かつての恋人。

欲しかった言葉が、今さらだけど冷えた体に沁みる。

「翔平……」

「俺とヨリを戻すこと、考えといて」

「え、ちょっと……」

「じゃあ、よいお年を」

翔平は私の返事を聞かないまま、晴海のようにさっさと帰っていってしまった。

私はしばらく、その場に立ち尽くした。

明日から仕事が冬休みでよかった。

頭を冷やす時間は十分にある。

寒い。

部屋に帰って、温かいコーヒーでも淹れよう。

砂糖とミルクを少なめにすれば、苦さで頭が冴えるかもしれない。



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