ラブソングは舞台の上で

そんな話をしていると、卓弥さんが男性グループから抜けてきた。

「酒も飲まずに何の話してんの?」

私服姿もイケメンだ。

メガネもこの間とは違う縁の太いタイプのもので、髪型も毛先が遊んでいる。

手には瓶ビールとビアグラスがふたつ。

「たくちゃんには教えなーい。女子トークに入ってこないでよ」

「なんだよ、ケチー」

彼は手早くともちゃんと私のビールを注ぎ、満面の笑みで差し出した。

「ありがと」

「ありがとうございます」

晴海には飲むなって言われてるけど、もう知らない。

私は二人と乾杯をして、ビアグラスを一気に空にした。

ちょっと温くなっててあんまり美味しくなかったけれど、束縛から解放されたような、清々しい自由の味がした。

「ぷはっ」

「明日香ちゃん、いい飲みっぷり」

「なんか、じゃんじゃん飲みたくなってきました」

晴海のバカ。私、飲んでやる。

その場にいるのに止めないあんたが悪いのよ。

「いいねぇ。おかわりどうぞ」

「ありがとうございます」

美男子に注いでもらう酒は美味い。

ぬるくても美味い。

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